Quest Storeで 4万件以上のレビュー を獲得し、驚異の ★4.9 という評価を保持している『I Am Cat』。TikTokでは関連動画が 数千万再生 され、「#IamCatVR」のハッシュタグは 4720万回 も視聴されるなど、世界中で猫旋風を巻き起こしています。
単純に「猫になる」だけでなく、ゴリラタグ式の移動システムを猫の動きに最適化し、サンドボックス要素と組み合わせた設計は見事です。
なぜここまで世界中で人気なのか、開発背景まで調査した内容を交えながら、その魅力を徹底解剖していきます。
『I Am Cat』ってどんなゲーム?
『I Am Cat』は、文字通り 猫になりきって大暴れするVRゲーム です。開発元はキプロスの新興スタジオ「New Folder Games」。わずか15名の小規模チームが、2024年5月にQuest App Labでアーリーアクセス版を公開し、瞬く間に話題となりました。
ゲーム基本情報
Quest 2/3/3S、PC VR(SteamVR)、PSVR2・Apple Vision Pro対応予定
New Folder Games(キプロス、2019年設立・15名)
舞台は優しいおばあちゃん(グランニー)の家。プレイヤーは一匹のイタズラ好きな猫となり、家の中を自由に探索しながら、様々なミッションをこなしていきます。
「ミッション」と言っても堅苦しいものではなく、本棚の本を全部落とす とか、花瓶を割る とか、グランニーの料理を邪魔する とか…まさに猫がやりそうなイタズラばかり!左手にはスマートウォッチが装着され、もう一匹の猫からのメッセージでミッションが届きます。
実際にプレイした体験談と移動システムの本質
初めて猫視点になった瞬間の衝撃
VRでスケール感を操作するゲームは数多くありますが、『I Am Cat』の巧みな点は 単なる縮小ではなく、猫特有の視点と動きを再現 していることです。
テーブルの高さ、ソファへのアプローチ角度、ジャンプの軌道まで、実際の猫の物理的制約を忠実に再現。これにより、『Moss』のような俯瞰視点とは異なる、主観的な小動物体験 が実現されています。
腕振り移動システムの革新性と制約が生み出す面白さ
このゲームの真の革新は 「ゴリラタグ式」腕振り移動システム にあります。両手を床について交互に押し出すことで前進する、この一見単純なメカニズムが、実は深い意味を持っています。
移動システムの本質的な面白さ
制約があるからこそ生まれる創造性が、このゲームの核心です。
- 物理的な制約:両手が床に着いていないと移動できない
- 体力的な制約:実際に腕を振るため、無限に走れない
- 空間的な制約:狭い場所では移動方法を工夫する必要がある
『Gorilla Tag』をプレイした経験がある方ならすぐに理解できるでしょうが、『I Am Cat』は移動速度を意図的に抑え、猫特有の瞬発力と持久力のバランス を再現しています。
例えば、高い棚に飛び乗りたい時。通常のゲームなら「ジャンプボタン」を押すだけですが、『I Am Cat』では
- 助走のために後ろに下がる(腕を何度も振る)
- 勢いをつけて前進(リズミカルに腕を振る)
- タイミングよく両手を前に突き出してジャンプ
- 着地に失敗すると派手に転がる
この一連の動作が、まさに猫が実際にやっているような動き を再現しているんです。30分もプレイすると翌日の筋肉痛は確実ですが、それだけ 身体性を伴った没入感 が得られます。
グランニーとの攻防戦が生み出すドラマ
このゲームの真骨頂は、なんといっても グランニーとの掛け合い です。
最初は優しく見守ってくれるグランニーも、あまりにイタズラが過ぎると…フライパン片手に追いかけてきます!「Bad kitty!」と叫びながら迫ってくる姿は、コミカルながらも意外とスリリング。
私のお気に入りは、グランニーがキッチンで料理している時に、こっそり食材を盗むミッション。見つかると追いかけっこが始まるんですが、猫の機動力を活かして
- 家具の下に潜り込む(本当に匍匐前進する必要がある!)
- カーテンの裏に隠れる
- 冷蔵庫の上まで登って逃げる
- 最終手段:グランニーの頭に飛び乗る!
まるで『トムとジェリー』の世界に入り込んだような気分です!
予想外のカオスが楽しい物理演算
『I Am Cat』の魅力の一つが、誇張された物理演算 です。
例えば、本棚の本を一冊落とすつもりが、勢い余って棚ごと倒してしまったり、ジャンプして着地に失敗すると派手に転がったり…思い通りにいかないことも多いですが、それがかえって笑いを誘います。
物理演算の挙動は『Job Simulator』や『Boneworks』を彷彿とさせますが、より軽量で誇張された設計。開発者は意図的に「予測可能性と予測不可能性のバランス 」を調整し、YouTubeやTikTokでのバイラル性を意識したとのこと。
開発チームの狙いと戦略 - なぜ猫だったのか?
『I Am Cat』の成功の裏には、New Folder Gamesの巧妙な戦略がありました。実は彼らは 1年間で9本ものVRゲームを次々とリリース しており、その中には歯科医シミュレーター『I Am Dentist』や警備員ゲーム『I Am Security』も含まれます。
「現在のQuestユーザーの相当数は若年層で、VRChatやGorilla Tagのような交流・ネタ要素を求めている。そこに刺さるコンテンツとして『笑えてシェアしたくなるもの』を作ろうと決めた」
- New Folder Games インタビューより
猫に着目したきっかけは、意外にも内輪の雑談から。メンバー全員が猫好きで、それぞれに飼い猫がいるほどだったため、ある日の会議で「もしVRで猫になれたら?手の代わりに肉球だったら? 」という冗談が飛び出しました。
興味深いのは、彼らが最初から バイラルを狙った設計 をしていたこと:
- 15秒で面白さが伝わるシンプルなコンセプト
- 見た目のインパクト(四つん這いで走る人間の姿)
- 言語に依存しないユニバーサルな楽しさ
- 低価格での参入障壁の低さ(初期$14.99)
実際、開発コストはAAAタイトルの 10分の1以下 でありながら、レビュー数では大作を圧倒。『Asgard’s Wrath 2』の約7倍のレビュー数を獲得するという快挙を成し遂げました。
なぜバズったのか?SNS時代の申し子の側面
理由①:SNS映えする破壊的な猫行動
TikTokやYouTubeを見ると、『I Am Cat』の動画が山のように投稿されています。特に人気なのが:
📱 バズった動画コンテンツ TOP5
- グランニーを毒殺(?)してみた - 200万再生突破
- 家を完全破壊スピードラン - 150万再生
- 20匹の猫で海賊船大乱闘 - 300万再生
- 猫vs犬の世紀の対決 - 180万再生
- グランニーの頭に鍋をかぶせて逃走 - 250万再生
SNSでは「グランニーの頭に鍋をかぶせて視界を塞ぐ」動画が 3万いいね を超えるなど、見ているだけで楽しさが伝わるゲームデザインが、バイラルヒットの要因の一つでしょう。
理由②:言語の壁を超える直感的な楽しさ
日本語非対応にもかかわらず、多くの日本人プレイヤーが楽しんでいる理由は 言葉が不要 だから。
「猫になって暴れる」というシンプルなコンセプトは、文化や言語の違いを超えて誰もが理解できます。実際、我が家の5歳の甥っ子も「にゃーにゃー」言いながら1時間以上夢中でプレイしていました。
理由③:コミュニティの創造性を引き出す設計
開発チームは賢明にも、プレイヤーの創造性を引き出す余白 を残しました:
- 明確なゴールを設定しない自由度
- バグか仕様か分からない挙動を残す
- プレイヤー同士で遊び方を発明できる環境
結果として、コミュニティでは次々と新しい遊び方が生まれています:
- 猫パルクール:最速で家中を駆け抜ける
- グランニー護衛チャレンジ:グランニーを他の猫から守る
- 隠れんぼ大会:20匹で本格的なかくれんぼ
- 料理対決:誰が一番上手に料理を作れるか
最新マルチプレイアップデートで更なる進化!
2025年6月13日、待望の マルチプレイモード「Multicat Madness」 が無料アップデートで実装されました!
20匹の猫で大暴れ!新マップ「空飛ぶ海賊船」
マルチプレイ専用の新マップ「Sky-Purr-ate(スカイパーレート)」は、空中に浮かぶ海賊船 が舞台。
このマップで楽しめるアクティビティ:
- 雪合戦:甲板で繰り広げられる白熱のバトル
- 剣術対決:中世の剣を使ったチャンバラ
- 巨大ピアノ演奏会:20匹で奏でるカオスな音楽
- 料理バトル:誰が一番早くケーキを作れるか
- ネズミ鬼ごっこ:1匹がネズミ役になって逃げ回る
追加されたカスタマイズ要素
マルチプレイアップデートと同時に、15種類の猫スキン が追加されました:
- 三毛猫、黒猫、シャム猫などの定番
- レインボーカラーの特殊スキン
- 海賊帽子や眼帯などのアクセサリー
- ゴールドの爪(レビュー特典)
他のVR猫ゲームとの徹底比較
「VRで猫になる」というコンセプトは過去にも試みがありましたが、『I Am Cat』ほどの成功例は他にありません。なぜでしょうか?
タイトル | リリース年 | コンセプト | 価格 | 評価 |
---|---|---|---|---|
I Am Cat | 2024年 | 猫で大暴れサンドボックス | 約3,100円 | ★4.9(4万件) |
Catify VR | 2018年 | 猫の日常シミュレーター | 約1,000円 | ★3.2(200件) |
Konrad the Kitten | 2017年 | 子猫の冒険 | 約1,500円 | ★3.8(500件) |
『Catify VR』との比較
2018年にリリースされた『Catify VR』は、パリのアパートで猫になる体験を提供しました。しかし:
- Catify VR:猫の日常を体験(歩く、寝る、爪を研ぐ)
- I Am Cat:猫の非日常を体験(破壊、イタズラ、大冒険)
『I Am Cat』は「退屈になりがちな日常シミュレータ」ではなく、「猫で大騒ぎする」エンタメ に振り切ったことで差別化に成功しました。
『Gorilla Tag』との比較
移動システムの元祖である『Gorilla Tag』と比較すると:
- Gorilla Tag:対戦・競技性重視、ルールが明確
- I Am Cat:自由度重視、ルール無用のサンドボックス
この自由度の高さが、一人遊び・協力・対戦・ネタ動画撮影と様々な楽しみ方を許し、より幅広いユーザー層を取り込む強みとなりました。
フラットゲーム『Stray』との比較
2022年に話題となったPS5/PC向けの猫アドベンチャー『Stray』とも比較されますが:
- Stray:美しいビジュアルと感動的なストーリー
- I Am Cat:VRならではの身体性と自由な破壊
『I Am Cat』は、Strayではできない「自分で物を倒す・掴む・投げる」といった 物理的なインタラクション でVRならではの猫体験を実現しています。
ユーザーレビューから見える賛否両論
4万件以上のレビューを分析すると、興味深い傾向が見えてきます。
絶賛の声(全体の85%)
「これは未完成の高額デモだという批判もあるが、バカバカしくて最高に楽しい。子供が大笑いで遊んでいる」
— Questユーザー(★5)
「VRで猫になるなんて完璧なアイデアだ。自分は5分で飽きたが、14歳の息子は2時間も遊んでいた」
— 保護者レビュー(★4)
「腕がちぎれるほど運動したけど笑いが止まらない。VR酔いしやすい自分でも平気だった」
— 日本のユーザー(★5)
批判的な声(全体の15%)
「60分で遊び尽くした。残りは繰り返しだ。$20は高すぎる」
— Steamユーザー(★2)
「20ドル本体を買った上にチュートリアル以降は有料DLCだなんて詐欺だ」
— 誤解したユーザー(★1)
レビュー分析から見えること
- Quest層(カジュアル):圧倒的に高評価
- Steam層(コアゲーマー):賛否両論
- 若年層・家族層:特に人気
- 価格への不満:主にコンテンツ量との比較
興味深いのは、批判的なレビューでも「つまらない」ではなく「もっと遊びたいのにコンテンツが足りない 」という意見が多いこと。これは逆に言えば、基本的なゲームプレイは高く評価されている証拠でもあります。
屋外エリアと隠し要素
アップデートで追加された屋外エリアでは、精肉店のブッチャーやブルドッグなど新NPCとの攻防が楽しめます。
また、秘密の部屋や隠し通路など、コミュニティで日々新しい発見が報告されています。
どんな人におすすめ?プレイ前の注意点も
特にこんな人にはマストバイ!
✅ 強くおすすめしたい人
- VR初心者:操作がシンプルで、短時間でも楽しめる
- 家族でVRを楽しみたい人:子供も大人も一緒に笑える
- ストレス発散したい人:思いっきり暴れてスッキリ!
- 配信者・動画投稿者:ネタの宝庫、視聴者ウケ抜群
- 運動不足の人:楽しみながら全身運動
- 猫好き:説明不要!
プレイ前に知っておきたい注意点
⚠️ 注意事項
- VR酔い:腕振り移動は酔いにくいとされていますが、急な方向転換で酔う人も。最初は15分程度から始め、徐々に慣らしましょう
- 筋肉痛:四つん這い移動は想像以上に体力を使います。翌日は腕、肩、背中が筋肉痛になる覚悟を!準備運動必須
- プレイスペース:最低2m×2mは必要。思いっきり腕を振るので、周囲の家具や壁に注意
- コンテンツ量:シングルプレイは2-3時間でメインコンテンツは遊び尽くせる。マルチプレイや隠し要素探しで寿命は延びるが、100時間遊べるタイプのゲームではない
- 床の保護:膝をつくことも多いので、ヨガマットがあると快適
快適にプレイするためのTips
- グローブ装着:手の保護と滑り止めに
- 扇風機設置:運動量が多いので風通しを良く
- 水分補給:30分に1回は休憩を
- 友達と交代プレイ:見ている側も楽しい!
まとめ:シンプルさの中に潜む深いゲームデザイン
『I Am Cat』は、技術的には決して最先端ではありません。グラフィックは『Half-Life: Alyx』に及ばず、物理演算は『Boneworks』ほど精密ではない。
しかし、「VRでしか実現できない体験」の本質を突いている 点で、極めて重要な作品です。身体性、スケール感、インタラクションの自由度を、猫というテーマで見事に統合しました。
このゲームの分析から見えてきたのは、制約駆動設計(Constraint-Driven Design) の巧みさ。腕振り移動の物理的制約、猫のサイズによる空間的制約、これらが創発的なゲームプレイを生み出す仕組みは、インディーVR開発の教科書的事例と言えるでしょう。
友人や家族と一緒にプレイすれば爆笑必至ですし、一人でも十分にストレス発散できます。配信すれば視聴者も巻き込んで楽しめる。VRの可能性を「楽しさ」という最もシンプルな形で示してくれた本作は、まさに VRゲームの新しい可能性 を切り開いた作品と言えるでしょう。
約3,100円でこれだけ笑えて、運動にもなって、みんなで楽しめるなら、コスパは最高です。VRヘッドセットを持っているなら、ぜひ一度は体験してみてください。きっとあなたも、猫になって大暴れする楽しさにハマるはずです!
そして最後に…グランニーには優しくしてあげてくださいね(無理か)。